以前、ゲルマニウムラジオの製作に挑戦したのですが、残念ながら受信することができませんでした。今回は前回に比べてより受信感度が良いと思われる電池を用いたトランジスタキットを購入し、リベンジしました。
製作に際しては、電子部品についても少し調べました。
結論から言うと、今回初めて自作ラジオで関西ラジオの受信に成功しました。
以下では、電子部品、回路構成、組み立て、という流れで簡単に紹介させていただきます。
1. 電子部品
電子部品は、(1)整流・増幅等を行う能動部品、(2)供給された電力をそのまま消費・蓄積したりする受動部品、(3)電気回路それ自体に寄与しない機構部品に大別されるようです。
左上に3つある部品は、トランジスタ(2SC1815GR)×3で、その隣がラグ版です。
下段は左から、抵抗(22KΩ)×2、抵抗(1MΩ)、リードインダクタ、積層セラミックコンデンサ、電解コンデンサー、ポリバリコンとなっています。
先の分類に当てはめると、トランジスタが能動部品、ラグ版は機構部品、その他が受動部品になるかと思います。
〔トランジスタ〕
2SC1815GRは、調べてみると、東芝製のNPNトランジスタですね。http://www.op316.com/tubes/tips/image/2sc1815.pdf
最初に取り組んだ際に、ベースとエミッタを逆にしてハンダ付けをしてしまったので、向きには注意しなければいけないです。
〔抵抗〕
抵抗にはカラーコードがついており、この色によってどのような抵抗であるかを読み取ることができます。
一番左にある2つの抵抗①は上から赤赤橙金、もう一つの抵抗②は上から茶黒緑金となっています。
カラーコードのうち、上から1、2番目は抵抗値の実数部を、上から3番目は乗数を、一番下は誤差を表しています。
今回、①は「赤赤橙金」なので、22×10^3=22K〔Ω〕で誤差が5%であり、②は「茶黒緑金」なので、10×10^5=1M〔Ω〕で誤差が5%です。
これらは炭素皮膜抵抗なので、誤差が比較的大きくなっています。
〔インダクタ(コイル)〕
リードインダクタにもカラーコードがついています。
上のサイトによれば、3本式の場合、上の2本が数値、3本目が乗数を示しているようです。
今回の場合、「橙橙茶」なので、33×101^=330μ〔H〕です。
〔コンデンサ〕
このキットに含まれているコンデンサは3つありました。
(1) 101と書かれているものが積層セラミックコンデンサーです。これはセラミックと金属板を多層にすることで表面積を大きくし、大きな静電容量を得ているみたいです。なお、セラミック(=陶磁器)コンセンデンサは、絶縁体にセラミックを使用しているため、大きな電流を流しても発熱が小さいという特徴があります。
(2)次に、極性のある黒い部品が電解コンデンサです。見たところ、rubyconのアルミ電解コンデンサみたいです。電解コンデンサは、片方の電極にだけ化成処理(=絶縁体を形成させる表面加工)が施されているため、極性を持ちます。この場合、リード線の長い方から短い方へと電流が流れるように使用するので、長い方が陽極、短い方が陰極となります。大きさは4.7μFのようです。
(3)最後はバリコンです。バリコンはVariable condenserの略なので、読んで字の如く可変コンデンサーのことですね。コンデンサの静電容量は、向かいあう金属板の距離に反比例し、面積に比例します(C=ε・S/d)。バリコンは、中心軸にそって可動電極を動かすし、2枚の金属板の距離を変化させることで静電容量の値を変える仕組みになっています。
2. 回路構成
回路構成は結構複雑で、よくわかりません。
一応、リードインダクタ=コイルとポリバリコンによって同調回路が構成され、受信した電波をトランジスタで検波を行う、というのが基本的な構造ですが、、。
説明書には、「2石をエミッタフォロアのダーリントン接続して増幅度を稼いでいます」とあります。
ダーリントン接続とは、2つのトランジスタを等価的に1つのトランジスタとして扱える接続方法で、高い電流増幅率を得ることができるそうです。↓
また、「入力インピーダンスの高いエミッタフォロア回路を採用することにより、同調回路のQが上がり感度・選択度が向上します」といった説明もありますが、
エミッタフォロア回路というのがよくわかりません、、。
3. 組み立て
半田付けは、複数の端子をまとめてから一気に接合しないと面倒なことになります。(後から追加で接合できなくはないですが、結構難しいです。)
また、リード線どうしが接触しやすいので、全て付け終わった後、入念にチェックをしました。
4. 受信
電池を挿入したときに、「ガリッ」という音がしないときは、配線に不備がある可能性が高いということでした。試すと、入れたときにはほとんど音がしませんでしたが、抜くときには確実に音がしました。
バリコンは適当な大きさに合わせ、とにかく家中を歩き回りました。そうすると、大きなノイズを捉えることができたので、そのまま受信できる地点を探し続けると、5分後くらいにはっきりと音声が聞こえてきました。
バリコンをいじって、聞こえやすい電波を探してみると、ついにラジオ関西のこちらの番組を受信できました。↓
神戸や徳島などの近畿・中国地方の県境を訪れ、現地の人々を取材し、その後、歴史家の田辺眞人が解説をするという番組でした。音声は明瞭に聞こえました。
一つ一つの部品が相互に繋がり機能することで本物のラジオ受信機になる、というのは感動でした。今度は回路についても学んでいこうと思います。
使用したキット↓ こちらはアマゾンでも購入できます。
参考文献: 松本光春『電子部品が一番わかる』(技術評論社、2013年)。