yokoken001’s diary

読書メモ・レジュメ・レポートなど

Baker(1970), Chapter 10.

Chapter 10 Further Struggles and Achievements (pp.100–105)

 

第10章では、1904年に起きた重要な出来事が時系列に沿って述べられる。2月には日露戦争が始まったが、マルコーニ社は陸上局の方に関わっていたようである。ロシア海軍の無線機についてはほぼ記述がない。そして本書は無線史全般を扱っているにもかかわらず、残念ながら日本が日露戦争で無線機を活用したことについても一切言及されていなかった。

技術的には、フランクリンによるディスク・キャパシターの発明が重要だろう。これは一種のバリコンであると思われ(現在のバリコンも半円型の2枚の金属を回転させる仕組みになっている)、同調操作を向上させた点に意義があった。法律面では、1915年1月から施行された英国の無線電信法が重要である。

 

 

  • 磁気検波器の利点は、通信速度を上げる点にあった。コヒーラーは一度電波が通過したのち鉄粉をもとに戻す(デコヒーラー)手続きが必要であり、1分間に10語の受信が限界だった。それに対し磁気検波器は他のどの会社の受信機よりも素早く通信を行うことを可能にし、有線通信が優位である状況を打開することに貢献した。1920sまでには、Maggieが通信サービスに取り入られた。
  • ポルデュー局ではT型のアンテナが設置され、スコットランドのFraserburgとに間で試験を行い、1kWで通信可能であることを確かめた。
  • 1904年5月7日にマルコーニはCampaniaに同乗し、長距離範囲での可否の確認を行ったが、1200マイル(昼)、1700マイル(夜)といった不十分な結果だった。マルコーニはもはや自由なエージェントではなく、多くの株主を抱える会社の僕(servant)であった。よって彼はこれ以上実験を行うことはできず中止を余儀なくされた。彼は収益資産として、ポルデュー–グライス湾との間で、通信サービスを行うことを決めた。1904年6月4日に、大西洋で無線によるニュースサービスが正式に始まった。Cunard Bulletin

という雑誌が日刊で出され[i]、同社の宣言ツールとしての役割も果たした。

  • 1904年2月、日露戦争が勃発した。ロシア政府の招待により、マルコーニ社は陸上局を提供した。サンクトペテルブルクのVishini Volechok、Vadivostokに低出力の送信局が建設された。このときの設置を担当した技師の一人がS. フランクリンだった。だが、彼らは極寒のロシアの冬を凌ぐ衣服を与えられず、本社に有線で提供を申し出たところ”Wark harder!”という返事を得たと言われる。結局衣服は届いた。また、開局式にて神父が聖水をかけ、高電圧電源がショートし、局が停止してしまうという事件もあったという。とはいえ、陸上無線に関してはロシア側は満足していた。が、海軍はそうではなかった。マルコーニ社のアーカイブには、ロシア海軍の無線機は同社のライバル社が提供したものだったことが記録されている。
  • ところで、フランクリンはディスク式のコンデンサー(Disc Capacitor)を開発したことで大きな貢献をした。これはチューニング操作を容易にする上で重要な改善だった。
  • 1904年2月には「通信チャート」と呼ばれるものが従来の航海リストに取って代わった。これによって電信員は常にある範囲内にどういった船が存在するのかを確かめることができた。
  • 1904年5月には、カナダマルコーニ社(Canadian Marconi Company)は、カナダ政府との間で8局の建設を含んだ契約を結んだ。さらに7月にはイタリアにて、世界で最も大きな電力の局を建設した。
  • 1905年1月1日から、英国で(?)新しい無線電信法(Wireless Telegraphy Act)が施行した。これによって、英国内での局建設には、いかなる組織であっても郵政公社総裁(Postmaster General)の許可が義務化された。一度認証されると8年間有効と認められた。
  • さらに、このとき無線を使用した気象予報も始まった。

1904年12月までには、マルコーニ社は69の陸上局、124の船舶局を持つ巨大な企業になっていた。そしてこのことは、無線電信が商業・軍用通信の手段として価値あるものという評価が高まっていたことの証拠だった。だが、1904年に最も重要な出来事は、二極真空管(thermionic valve)の発明であった。(これは次章

 

[i] https://digitalarchive.tpl.ca/objects/266486/cunard-bulletin