yokoken001’s diary

読書メモ・レジュメ・レポートなど

文学(小説、詩、戯曲など)

『破局』の紹介

遠野遥『破局』の紹介 第163回芥川賞を受賞した遠野遥『破局』を読みました。本当は二度読んでからレビューを書こうと思ったのですが、待ちきれずに一読したタイミングで書いています。 この小説が扱っているテーマというか素材には全く共感できませんが、創…

平野啓一郎『透明な迷宮』を読みました。

『透明な迷宮』は、2014年に刊行された短編集で、著者自身による創作時期の分類によると、第4期(後期分人主義)に含まれる作品だ。一つ一つの小品は完全に独立しているわけではなく、テーマや要素が緩やかに重なり合う6つの短編が収録されている。 作風として…

平野啓一郎『かたちだけの愛』を読みました。

これまで、『ある男』、『マチネの終わりに』、『空白を満たしなさい』と著者の長編小説を時代を遡っていくように読んできた。そして、今回読んだ『かたちだけの愛』という小説は、僕にとって、4作品中一番読み応えがあり、もっとも好きな作品になった。 多…

平野啓一郎『空白を満たしなさい』を読みました。

一度死んだはずの人間が生き返ってくる。 この非現実的な設定を通じて、あるいは一つの思考実験を通じて、人間が生きるということまた死ぬということは何なのか、そして人はなぜ自殺をするのかという問題を考えた長編小説である。 主人公の徹生は、ビールの…

平野啓一郎『ある男』を読みました。

とてもいい物語だった。この小説を読んでいたここ一週間、本を開いている間は、この物語世界にどっぷりと浸ることができた。 本書では、臓器移植、在日朝鮮人へのヘイトスピーチ、デモへ参加することの是非、死刑の是非、死刑囚の子どもなど、数多くの社会的…

ミシェル・ウェルベック『セロトニン』を読みました。

待ちに待った(いや、ものすごく待望していたわけではないのだが、)ウェルベックの最新長編小説『セロトニン』を読み終えた。原著も2019年に出版されているので、パリ在住の関口氏によりかなりスピーディーに翻訳され、日本に輸入されたということになる。 こ…

鴻池留衣『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』を読みました。

何かすごいことが書かれていたという漠とした余韻を残しつつも、結局何が言いたいのかよくわからない作品だった。 単行本の帯に書かれているように、本作は「ポスト真実」の時代をテーマにした作品のようにも思える。というのも、登場するのは、架空のバンド…

上田岳弘『塔と重力』を読みました。

小説と音楽は全く違う芸術だけれど、ある種の小説を読むことは、音楽を聴くことに似ているところもある。 音楽は聴き終えた瞬間に−−つまり音楽が完成した瞬間に−−全てが消えてなくなってしまう。しかし小説であっても、読み終えたときに残るのは、作品全体に…

上田岳弘『ニムロッド』を読みました。

先日、第161回芥川賞が、今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』に贈られたが、本作の『ニムロッド』は、その一つ前の第160回の芥川賞受賞作だ。 上田岳弘作品としては、以前に『私の恋人』を読んだことがあるが、『ニムロッド』はそれに比べてやや読みや…

村田沙耶香『コンビニ人間』を読みました。

コンビニ化する◯◯、コンビニ的な◯◯という言い方を、時々耳にします。日本に5,6万件もあるといわれるコンビニは、どの店舗もよく似ていて、そこには機械で作られた清潔な製品で溢れ、それも食品から日用品まで多種多様な製品を扱い、その名の通り生活上「便利…

ミシェル・ウェルベック『闘争領域の拡大』を読みました。

『Extension du Domaine de la Lutte』 (1994)の邦訳。ウェルベックの処女作で、長らく手に入りづらい状態が続いていたが、最近文庫化された。平野啓一郎がどこかで推薦していて、ずっと興味があったので、この機会に読んでみた。 主人公の「僕」はソフトウ…

福永武彦『死の島』を読みました。

国内で好きな作家を一人挙げろと言われたら、おそらく堀辰雄か福永武彦かで迷い、結局福永と答えるだろうと思う。彼の工夫された小説の構築手法もそうだが、それ以上に、明快でありながら、音楽のように優しく流れていく文体がたまらなく好きだ。高校のとき…

上田岳弘『私の恋人』を読みました。

『私の恋人』は上田岳弘による発表順としては3番目の小説である。本作品は又吉直樹『火花』との決選投票の末、第28回三島由紀夫賞を受賞した。今年の2月に文庫化され、単行本と共に、カバー装画には、Paul Kleeの"Angelus Novus"が採用されている。 きっかけ…