yokoken001’s diary

読書メモ・レジュメ・レポートなど

Hunt (1991), Intro-Chapter 1

Bruce Hunt, The Maxwellians, Cornell University Press, 1991. 電磁気学史の古典。読んでいないとまずい本。 Introduction (pp.1-4) マックスウェルの電磁場理論は、19世紀だけではなくあらゆる世紀における最も顕著な知的達成であるとみなされている。晩…

平野啓一郎『本心』を読みました。

『ある男』から三年、新作の長編『本心』が5月26日に刊行された。 少しだけ時間が取れたので、久しぶりに小説を読もうと思い、手にとったのが本作である。 物語は、今からおよそ20年後である2040年の日本が舞台とされる。AIやVRといったテクノロジーが日常生…

電子部品について学びながら3石トランジスタラジオを作る

以前、ゲルマニウムラジオの製作に挑戦したのですが、残念ながら受信することができませんでした。今回は前回に比べてより受信感度が良いと思われる電池を用いたトランジスタキットを購入し、リベンジしました。 製作に際しては、電子部品についても少し調べ…

推し、燃ゆ

第164回芥川賞を受賞した宇佐美りん氏の『推し、燃ゆ』を読んだ。 16歳の少女あかりが、彼女の推しである上野真幸というアイドルに心酔し、自身の身体や生活を、彼のために捧げる生活を丹念に描写した作品。 言うまでもなく、idolには「偶像」という意味があ…

Gary L. Frost(2010), Conclusion

Conclusion (pp.135-142) 終章では、社会構成主義/技術決定論の是非、イノベーションにおける自然法則の意味、アクターネットワーク理論に関する議論、FMラジオの将来など、(序章で設定された)技術史における主要なトピックと関連付ながら、やや俯瞰的な立場…

Gary L. Frost(2010), Chapter 5

Chapter 5 FM Pioneers, RCA, and the Reshaping of Wideband FM Radio, 1935-1940 (pp.116-134) 第五章では、1935年から1940年までのFM技術の展開が扱われる。1935年にニューヨークで行ったアームストロングによる広帯域FMの演示の後においてさえも、RCAは…

夏目漱石『草枕』

大学1年生くらいの頃から今まで、おそらくは4、5回くらい『草枕』に挑戦したが、毎回途中で挫折してしまった。そして、25歳の今、漸く初めて通読することができた。 それにしても、他の漱石の作品に比べて、『草枕』は言葉が圧倒的に難しい(ように感じる)。…

Gary L. Frost(2010), Chapter 4

Chapter 4 The Serendipitous Discovery of Staticless Radio, 1915-1935 (pp.77-115) 第四章では、アームストロングがコロンビア大学の学生であった時期まで遡って、空電の影響を抑制するFM技術がいかに発見されたのかが述べられる。技術的な細部については…

すばらしき新世界

Aldous Huxley著のBRAVE NEW WORLD(1932年)の全訳。訳者は大森望で、「めっぽう面白いSFを訳すつもりで日本語化」することを目指したという。ちなみに祖父のトマス・ヘンリー・ハックスリーはチャールズ・ダーウィンの犬として知られる、進化論を支持した生…

Gary L. Frost(2010), Chapter 3

Chapter 3 RCA, Armstrong, and the Acceleration of FM Research, 1926-1933 (pp.61-76) 第三章では、1926年から1933年にかけて、RCAやアームストロングが行ったFM研究が扱われる。分量的には多くないが、語彙のレベルが高く、比較表現や仮定法が散見され、…

Gary L. Frost(2010), Chapter 2

Chapter 2 Congestion and Frequency-Modulation Research, 1913-1933, pp.37-60. 第二章の前半では、著者が「スペクトルパラダイム(spectrum paradigm)」と名付けるパラダイムが関係者らに定着していく様子が描かれる。スペクトルパラダイムとは、波長を表…

Gary L. Frost(2010), Chapter 1

Chapter 1: AM and FM Radio before 1920 (pp.12-36) 第一章では、1920年代以前に存在していたFM技術について述べられる。一般的にFM技術は1933年にアームストロングが発見したと認識されているが、それは誤りである。Cornelius Ehretという人物は、1902年の…

Gary L. Frost(2010),Introduction

Gary L. Frost, Early FM Radio- Incremental Technology in Twentieth- Century America, Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2010. 以下、序章の覚書です。 Introduction (pp.1-11) 本書は、周波数変調(FM)ラジオの従来の歴史との決別を示す…

Aitken, C.W , Chapter4

Aitken Continuous wave, Chapter 4 De Forest and the audion (pp.162-249) 本章では、主にオーディオンの発明者であるド・フォレストに焦点が当てられる。 著者によれば、ドフォレストの活動は2つの時期に区分できるという。一つは、彼がイエール大学に在…

松岡、2001

松岡正「戦時期真空管工業における生産技術」『社会環境研究』第6号(2001年)、77-87頁。 本稿は、日本の戦時期の真空管工業について技術蓄積(主に生産技術)の観点から検討することを目的としている。経営史の植田、和田らの先行研究では、戦時期の真空管の不…

Constant Ⅱ, A model for Technological Change

Edward W. Constant Ⅱ, ”A model for Technological Change Applied to the Turbojet Revolution” Technology and Culture, Vol.14, No.4 (1973), pp.553-572. クーンのパラダイム論を技術史へ応用した初期の試みとして、しばしば言及される論文である。(本…

テクノロジーとイノベーション

ブライアン・アーサー(日暮雅通訳)『テクノロジーとイノベーション- 進化/生成の理論』(みすず書房、2011年) 興味深い内容で、技術史研究に取り組む上でも非常に示唆的だったので、詳しくレビューしていきます。 テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の…

Saga, Chapter2-4.

真空管の歴史を扱った最も重要な文献の一つに、Saga of the Vacuum Tube, Indianapolis: H.W. Sams & Co. 1977. がある。 2-4章を読んだ限り、本書は図面が豊富で、真空管の性能に関する情報が詳述されている一方、真空管技術を取り巻く社会的背景の描写や、…

Aitken, C.W , Chapter3

Aitken Continuous wave, Chapter 3 Elwell, Fuller, and the Arc (pp.87-161) 本章では、フェデラル無線電信のElwellおよび彼の後継者であるFullerという人物に焦点を当て、彼らが火花式からアーク式へと送信技術を一新させる過程が描かれる。アーク送信機…

『破局』の紹介

遠野遥『破局』の紹介 第163回芥川賞を受賞した遠野遥『破局』を読みました。本当は二度読んでからレビューを書こうと思ったのですが、待ちきれずに一読したタイミングで書いています。 この小説が扱っているテーマというか素材には全く共感できませんが、創…

Aitken, C.W , Chapter2

Chapter 2 Fessenden and the Alternator (pp.28-86) 以下はかなり長文になっていますが、私が理解した範囲で、第二章の内容をまとめています。 (三章以降はもっと簡潔にします。) 1899年11月22日に、Western university of Pennsylvania(現在のピッツバーク…

Aitken, C.W, Chapter 1

Hugh D.J. Aitken Continuous Wave: Technology and American Radio. 1900-1932, Prinston University press, 1982.という文献を読みます。 かなり高い山ですが、少しずつ登っていきます。読書メモ(主に要約文)を作成しながら、読み進めていきます。 余裕が…

宮崎駿『出発点: 1979-1996』を読みました。

ある作業がひと段落ついたので、兼ねてから読みたいと思っていた宮崎駿『出発点』を一気に読んだ。思いつくままに、つらつらと感想を書いておく。 本書には、1979年から1996年までに様々な媒体に発表された対談、企画書、講演、エッセイなどを収録されている…

Hong, Sungook (2001). Wireless- from Marconi’s black-box to the audion, The MIT Press.

本書は、ソウル国立大学の教授であるHong(洪)氏が、マルコーニの無線電信機から三極真空管までの無線通信の歴史を描いたものである。初期の無線通信史の先行研究としては、Aitkenによる『同調と火花』、『連続波』があるが、彼でさえも科学的・工学的実践の…

David Edgerton (2007) “The shock of the old” , Chapter 4 Maintenance

David Edgerton (2007) “The shock of the old- Technology and Global History Since 1900” Oxford University Press Chapter 4 Maintenance メンテナンス(maintenance)は、人とモノとの関係において非常に重要な活動であるにも関わらず、技術史でもあまり…

沢井実『近代日本の研究開発体制』とその書評を読む。

沢井実『近代日本の研究開発体制』(名古屋大学出版会、2012年) 本書は、研究開発体制(ナショナルイノベーションシステム)の近代日本における特質を約半世紀に及ぶ長期的な視点に経って600頁以上に渡って考察した大作である。著者が描く見取り図は、幕末から…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (6)

Hugh G.J. Aitken, Syntony and Spark: The origin of radio (New York: Wiley, 1976),(Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), pp.298-340. 最終章では、序章で設定されていた問題、すなわち、科学と技術と経済という3つの社会的活動…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (5)-2

: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 5.後半(pp.244-297) 5章後半の内容のまとめ。備忘録です。 マルコーニが、火花式(disc-discharger)によって、連続波に近い波の発振を…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (5)-1

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 5.pp.179-244. 以下では、第五章の前半までの内容をまとめています。ここでは、グリエルモ・マル…

平野啓一郎『透明な迷宮』を読みました。

『透明な迷宮』は、2014年に刊行された短編集で、著者自身による創作時期の分類によると、第4期(後期分人主義)に含まれる作品だ。一つ一つの小品は完全に独立しているわけではなく、テーマや要素が緩やかに重なり合う6つの短編が収録されている。 作風として…