yokoken001’s diary

読書メモ・レジュメ・レポートなど

宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』を観て—新しい「戦前」を生きる僕たちへ

宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』の二回目を観終えたところで,感想を記しておきたい. 本作品で,吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が登場するのは,主人公が弓矢を製作する最中に偶然落とした本の中から本書を見つけ出す場面である.そこでは…

Mizuno (2009), Chapter 2

Chapter 2 Technocracy for a Scientific Japan 2-1 The Colonial Landscape of Technocracy (pp. 44–52) 1920sにおける技術官僚の地位の変わらない低さ,統合の失敗によって,工人倶楽部の主導者らは技術官僚の政治にとっての国内の地勢は良くないことを証…

Mizuno (2009), Chapter 1

Chapter 1 Toward Technocracy (pp.19–42) 世界的にみても,1910sには技術官僚(テクノクラート)が高い地位を求め,政治権力へ接近し始めるが,日本もその例外ではない.←重化学工業化,研究開発の推進 技術官僚の運動では土木工学者≒非軍事技術者(Civil engi…

Mizuno (2009), Introduction

Hiromi Mizuno, Science for the Empire– Scientific Nationalism in Modern Japan, (Stanford University Press, 2009) Introduction 1942年7月:座談会「近代の超克」が開催.日本の血と西欧の知をいかに調和させるか?→最も問題のあるトピック=科学. ←…

Baker(1970), Chapter 21.

Chapter 21 The Post-War Scene (pp.177–182) 第21章では、WW1後における無線通信市場の状況が外観される。WW1は無線技術を大きく促進させる契機になったが、その核は真空管の改良だった。戦後には民生市場に適合するような製品を生み出すことが企図され、Ma…

Baker(1970), Chapter 20.

Chapter 20 The Great War (continued) (pp.169–173) 第20章は、全章に引き続いてWW1とマルコーニ社との関係というトピックが扱われる。本章の記述からは、日本海軍が1920–30年代に開発した無線機の多くがWW1ですでに実装されていたことがわかる。例えば、戦…

Baker(1970), Chapter 19.

Chapter 19 Wireless at the Outbreak of the Great War (pp.158–168) 第19章は、マルコーニ社(あるいは無線技術全般)と第一次大戦との関係に関する内容であって、本書の中でも重要度の高い章であると考えられる。 論点としては、戦時の電信員養成に平時のア…

Baker(1970), Chapter 18.

Chapter 18 Further Advances in Technology (pp.149–157) 本章では、マルコーニ・スキャンダルとほぼ同じ時期(1910年前後)に見られた技術的な進歩について説明されている。重要なのは、ラングミュアのハードバルブ、ラウンドによる酸化皮膜フィラメントを備…

Baker(1970), Chapter 17.

Chapter 17 “The Marconi Scandal” (pp.143–148) 本章で扱われるのは、1912年に生じた「マルコーニ・スキャンダル」と言われる事件である。帝国無線網(the Imperial Chain of wireless)の入札に不正があったとして保守党から追及されたこの事件により、マル…

Baker(1970), Chapter 16.

Chapter 16 Momentous Events (pp.136–142) Momentous Eventsとは、(第一義的には)タイタニック号沈没事件のことである。タイタニック号の事故では、無線が人命救出に役立った側面があり、世論一般としては称賛されたようである。だが、その後の調査によって…

Baker(1970), Chapter 15.

Chapter 15 The Commercial “War” with Germany (pp.129–135) 第15章では、マルコーニ社にとっても最大の競合相手であったテレフンケンとの戦争について述べられる。同社の脅威は「テレフンケンの壁」とも言われた。 20Cの最初の10年間にわたって、マルコー…

Baker(1970), Chapter 14.

Chapter 14 The Transatlantic Service Realized (pp.123–­128) 第14章は、1907年から1908年頃に焦点を当てる。マルコーニ社が「帝国無線」に乗り出し、南アフリカに局を建設し始めるのはこの時期からである。(帝国主義と無線というテーマ巨大な問題であり、…

Baker(1970), Chapter 13.

Chapter 13 More Inventions and Discoveries (pp.114–122) 第13章では1905年から07年にかけて、連続波や無線電話といった新しいアリーナが開かれていく様子が描かれている。本章で技術的に重要なポイントは、disc dischargerである。だが、なぜ3つの円盤を…

Baker(1970), Chapter 12.

Chapter 12 The Directional Antenna (pp.110–113) 第12章では、1904年から5年にかけて、アンテナ構造を変えることで志向性が得られるということを発見し、それに基づく”Bent Aerial”の特許を取得するまでのいきさつが説明される。志向性電波は長波ではなく…

Baker(1970), Chapter 11.

Chapter 11 The invention of the Diode Valve (pp.106–109) 第11章は、1904年にフレミングが「オシレーション・バルヴ」を発明する過程が簡潔に述べられる。本書で描かれるストーリーは、既にHongのWirelessなどによって更新されているので、そちらを参照し…

Baker(1970), Chapter 10.

Chapter 10 Further Struggles and Achievements (pp.100–105) 第10章では、1904年に起きた重要な出来事が時系列に沿って述べられる。2月には日露戦争が始まったが、マルコーニ社は陸上局の方に関わっていたようである。ロシア海軍の無線機についてはほぼ記…

Baker(1970), Chapter 9.

Chapter 9 The Growing Competition (pp.93–99) 第9章では、1903年に起きた、マルコーニ社にとってのgood news/bad newsが述べられる。後者(bad news)は、ベルリンで開催された国際会議で、同社の独占的方針(=マルコーニ社の無線を装備した船は同じく同社の…

Baker(1970), Chapter 8.

Chapter 8 Progress and Problems (pp. 85–92) 本章ではやや時代を巻き戻して、世紀転換期におけるマルコーニ社の組織体制や人事について述べられる。同社は、子会社(マルコーニ国際海洋通信社)を抱えていただけではなく、各地に無線局が点在していたため、…

Baker(1970), Chapter 7.

Chapter 7 ‘ A transatlantic Service, but– ‘ (pp.74–84) 第7章が焦点を当てているのは、マルコーニがGlace Bayにて大西洋横断通信サービスを開始する前後の時期である。ただし、疑問点がいくつか残る章でもあった。 この時期においてまず重要なのは、マル…

Baker(1970), Chapter 6.

Chapter 6 The Transatlantic Gamble (pp.61–73) 第六章では、1901年–1902年にかけて、マルコーニが大西洋横断通信を達成する道筋が描かれる。一般的には、大西洋横断通信は1901年12月12日、ポルデューとセントジョンズのシグナルヒル間で達成されたと言われ…

Baker(1970), Chapter 5.

Chapter 5 Tuning: A Great Step Forward (pp.52–60) 本章のポイントは、マルコーニが「同調」性能を持った送受信機を開発する過程である。同調というのは、LC回路における共振という現象を利用して、特定の周波数の電波だけに選択的に反応するようにする仕…

Baker(1970), Chapter 4.

Chapter 4 Success and Setbacks (pp.44–51) 本章で紹介されるのは、世紀末におけるマルコーニ社における努力の様子である。この時期には英国海峡を隔てた長距離通信の成功や、アメリカでのヨットレースのレポートといったよく知られた偉業も達成しているが…

Baker(1970), Chapter 3.

Chapter 3 The Infant Company (pp.35–43) 第三章では、創業してまもないマルコーニの会社の様子が描かれる。この時期は、KempやMurrayといった限られたメンバーによって次々と無線通信の試験が行われていた。最も重要な指摘は、マルコーニが出版業界を味方…

Baker(1970), Chapter 2.

Chapter 2 The Young Signor Marconi (pp.25–34) 第二章では、マルコーニの生い立ちと、英国にわたった直後の様子が描かれる。中でもウィリアム・プリースは、マルコーニに無線の実用化のチャンスを与えたと同時に、英国郵政省の地位が彼の新技術によって脅…

Baker(1970), Chapter 1.

W.J. Baker, A History of the Marconi Company, London: Methuen, 1970. マルコーニ社に関する古典的研究であり、無線史研究者にとっての必読書でもあります。 全部で48章から成るなかなか高く険しい山ですが、少しづつ登っていきます。 Chapter 1 The Stag…

SHOT 2022 Annual Meeting

I was in New Orleans, U.S. to attend the SHOT Annual Meeting and present my research from November 10 to 13. This is my first time going abroad by myself, so I was very worried about it. During my trip, several miracles occurred. I was met…

Douglas, 1987, Intro~Chapter1

Susan Douglas, Inventing American broadcasting, 1899-1922, (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 1987) ラジオの歴史における必読書の一つである。本書は無線電信が放送というメディアへと変化するプロセスを「社会構成主義」のアプローチか…

Declan Fahy and Bruce Lowenstein, 2021

Declan Fahy and Bruce Lowenstein, “Scientists in popular culture – The making of celebrities” Routledge Handbook of Public Communication of Science and Technology (2021), Chapter 3. Ⅰ. Summary 3-1 Introduction (pp.33-34) The aim of this ch…

夏目漱石『門』

『門』は漱石が1910年に新聞に連載した小説で、前期三部作の第三作に当たる作品である。伊藤博文暗殺のニュースが登場していることから考えて、物語の時間もおおよそ1909年-10年くらいである。本作は前作の『それから』と連続しているが、前期三部作の中では…

井上充雄『帝国をつなぐ<声> 』 (2022年) 書評・感想

井上充雄『帝国をつなぐ<声> – 日本帝国植民地時代の台湾ラジオ』(ミネルヴァ書、2022年) 1906年12月にフェッセンデンが無線による音声送信に成功して以来、1920年KDKAが、1922年にはBBCがそれぞれ開局し、ラジオの時代が幕を明けた。各国におけるラジオの…