yokoken001’s diary

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Jeremy Vetter “Explaining Structural Constrains on Lay Participation in Field Science”

Jeremy Vetter “Explaining Structural Constrains on Lay Participation in Field Science”

Isis,Vol110,No2,pp.325-327.

 ↓DL可

https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/703334

 

 Jeremy Vetterは、20世紀西アメリカのネブラスカの採掘場おけるフィールド科学(Field Science)の研究を通じて、カーネギー博物館の科学者だけではなく、牧場経営をしている現地の人々(クック家)もその科学の実践に加わることで、そこにどのような協働・緊張関係が生じたのかを「説明」する。特に、現地の人が何かの影響力を持っていたということを主張するだけではなく、彼らは何をしようとし、何を達成でき/できなかったのかということを調べることで、その影響力における構造的な制約を説明することが試みられる。 

 方法上の大きな困難は、現地の人々に関するまとまった資料は、科学者とは異なって、しばしば存在しないということである。だが著者は、Agate Fossil Beds 国立博物館に保存されていたクック家の牧場経営に関する文書を発見し、これにより彼らの固有の世界観を読み解く視点を得ることができた。

 クック家の事例は、その地域に住んでいる現地人とは異なって非典型的な例であると言うことは簡単であるが、それゆえ、そこからより広い一般的な結論をひきだすということは難しいように思われる。これは、ローカルな歴史を研究する者が直面する複雑な問題である。だが、Vetterは、その資料群がどれほど豊かで示唆的であっても、広い結論を引き出すことを保証するためには、健全な議論が要求されると述べる。著者の議論においては、Agate Fossil Bedsの事例は、フィールド科学の実践に影響を与えようとした際、現地人が直面した限界点や束縛を示すことにとってのある格好の検証(a suitable test)を与えてくれるということである。

 Agate Fossil Bedsの事例において、クック家は、彼らの所有する土地を超える場所に位置している豊富な化石発掘の丘における公式の所有権を得るために、彼らの有利になるように土地法を巧みに悪用していた。さらに、土地をコントロールできただけではなく、しばしば過疎地域において不足している労働資源を制御することもできた。地域に関する専門知を持っているというクック家のアドバンテージは、彼らが要求していたことを達成する上で有効に活用されていたのである。だが、その一方、彼らが達成できなかったこともある。最も顕著なカーネギー博物館との間の摩擦は、クック家が採掘場において資料を発見した権利を主張しようする試みから生じた。最終的に、彼らの発見に対する正式なクレジットを認めたのはニューヨークの自然史博物館だけであった。現在では、ハロルド・クックが、調教や教育のためにアメリカの博物館に行くように招待されるようになった。

 

メモ:a suitable testの件がよくわからない。この議論の前提は、ある一つの非典型的な個別的な事例を通じて、20世紀初頭の西アメリカのフィールド科学における、科学者/現地人間の構造的な制約というより広い議論をいかにして展開することができるのかという、その難しさである。ここでは、その事例が非典型的であるからこそ、その議論にとっての「格好のテスト」を与えてくれるという文脈であり、一見するとわからなくもない気がするが、ここでは何をテストするというのだろうか?科学者/現地人間の構造的な制約という一般論が妥当であるかどうかを、その個別事例を試金石に、いわばtop-down式に検証するということなのだろうか。

 

参考:

 

 

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