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Peter Krose, Maarten Franssen and Luis Bucciarelli “ Rationality in Design” Handbook of the Philosophy of Science. Volume 9: Philosophy of Technology and Engineering Sciences, 2009.

Peter Krose, Maarten Franssen and Luis Bucciarelli “ Rationality in Design”

Handbook of the Philosophy of Science. Volume 9: Philosophy of Technology and Engineering Sciences, 2009, pp.565-600.

 

『Philosophy of Technology and Engineering Sciences』に収録された論文です。

設計における合理性とは何かということについて、主に科学哲学(加えて一部経済学の議論)に基づいて、哲学的に考察しています。大体、以下のような議論であると思われます。

 

  • Introduction
  • 工学の設計が多様である(機械・エレクトロニクスといった機能志向のものから建築などの美的志向のものまである)のと同様に、設計における合理性もまた多様である(経済的、技術的、科学的合理性といったある特定分野における合理性から、もっと一般的な理論的・実践上の合理性など)。
  • 本稿の目的は、工学設計の実践に関わる多種多様な合理性についての体系的な見取り図を示すことである。主要な問い=ある設計過程は、「いかなる意味で」「どの程度」合理的であるとみなされうるのか?
  • 合理性の根底にある考えは、ある決定が何らかの理由(reasons)に基づいて正当化されるいうもの。

→そしてその理由は、所与の設計過程や行動指針の中で、特定の行動指針が他に比べて目的を効果的に達成できるためにより好まれたということを示している。

→その行動方針こそが最も「合理的」な方法で、そして「合理的」な工学とは、そうした行為を選択することだと、一般的には考えられている。

⇄工学の実践はもっと複雑である。

  • Engineering Design
  • ABET(技術者教育認定会議)による「工学設計」の定義
  • 工学の設計過程においては、以下のような複数の活動がある。
  • 使用者(customer)の要求を機能的な条件に変換し、さらにこれらを物理的パラメータで記述される仕様書に変換する。
  • 広範囲な選択可能な選択肢をつくる。
  • その中から一つの選択肢を選ぶ。
  • 最終的な設計要求を評価する。                                                                                                                                    

※これらは線型的に進行するとは限らず、反復やフィードバックのループを含む。

  • 変換(翻訳)(translation)

:使用者の要求から機能的な条件へ←ニーズを適切に反映させる必要がある。

:機能的記述(入力-出力関係)から、構造的記述へ(物理的な特性)

  • 意思決定(decision making)

:設計の目的を定める、目的を修正する、利用可能な資源をどのくらい費やすか、いくつの選択肢が追求されるべきか、どの選択肢を棄却するか、どの選択肢をさらに発展させるか、評価基準は何か、など。

←設計過程の予期せぬ状況の変化にともなって決定も変わるという点で、これらは曖昧である。

  • Applying Standards of Rationality to Engineering Design
  • 設計における「合理性」の大雑把な観念:工学設計の問題を解いたり、意思決定することには、良い方法と悪い方法があり、「合理性」は設計の実践を良い方向へと改良することができる。
  • 合理的な方法はどのようになされるのか?

科学哲学における議論を援用する。

:科学の合理的な再構成(rational reconstruction)と、実際の科学の実践とを分ける。

カルナップ:概念の形成=想像上の手続きの公式化された記述→本質的には同様の心理的過程を導く。→科学理論の形成の合理的再構成は、合理的に規定されたステップを経て、「論理的」には同じ結果に至るものと考える。

←科学者らの実際の行動や推論が合理的かどうかは別の問題。最終的な理論へ至る一連のステップとしての実際の科学プロセスの合理性は、このように合理的に再構成されたステップと比較されることで評価される。

  • 設計過程における合理性の分析も同様である。

実際の設計におけるステップや決定は、合理的な再構成によって規定されるものとは異なっているが、それはその設計が「非合理」であることを意味しない。

∵設計の目標への明確な答えがない場合でも、しばしば中間的なステップや決定を評価しなければならない。それゆえ、最終的には間違っていたことがわかったステップや決定も、(その時々の状況の中では)「合理的」であったかもしれない。

→設計過程の合理的再構成=できるだけ重要でない要素を濾過して取り除き、最終目標を達成する過程を再構成していく過程

  • 合理的な再構成の根底にある考え=ある方法は他の方法よりも良かったり悪かったりし、設計にまつわる問題を解く上での「最善」の方法がある。

→工学設計の合理的な再構成は意味があるかどうか?またそれは、実際の設計と関係があるのかどうか?

  • 合理的な再構成を支持する→規範的な立場:設計がいかに行われるべきかという規範的な体系を示す。
  • 支持しない→記述的な立場:その設計の実践に関わった人たちは、どのような種類の振る舞いが合理的であるとみなしていたのかを分析し記述する。
  • 設計の合理性に関する議論→成功を評価する基準

設計の成果の成功を評価する基準はあるか。

直感的な見解:目的(目標)の効果的な実現にどれだけ役立ったか?

←目的をはっきりと定めることができるという前提。そうでなければ、その設計行為が目的に寄与したかどうかを証明することはできない。

→設計の解決(design solution)が、市場において成功し、革新的で、美しくあるべきだということと、それらの客観的な(間主観的な)点数を示すことは別のこと。

  • 設計過程における目標は、複数にレベルにわたって存在する。

企業レベルの目標:商品の商業的成功

技術者の目標:企業の目標に同意するが、実際の日々の営みではむしろ、仕様書に示された機能的条件を満たすことを目標にしている。

仕様書→詳細な構成要素についての指示=サブ・ゴール

サブ・ゴール同士はしばしば矛盾し、トレードオフの関係を作る。→設計が成功したかどうかを判断する困難さ。

  • 完全な機能的要求のリストがあったとしても、その設計が成功したかを評価する明確な基準を与えるとは限らない。

∵(1)様々な設計の慣例間の差異:電子工学の機能は技術的な機能によって(客観的に)表現されるが、建築の機能は心理的・社会的・美的特徴が重要になるため、明確で客観的な記述が困難。

(2)条件のリストは最初の地点で与えられたものにすぎない:知識や状況が変化することに合わせて、設計過程の中でそれらは再調整されていく。

4 Aspects of Rationality

工学設計の合理性の詳細な議論に入る前に、合理性の本性について外観する。

4.1 Broad and Narrow Notions of Rationality

  • 広義の合理性:アリストテレスの「人間は合理(理性)的な動物である」という言葉でいうところの合理性

=人間は因果法則にしたがう物理的な組成に言及するだけでは説明できず、目標や欲求をみたすべく自発的、意図的に振る舞う。

Rationality≒intentionality(故意性、意図性)

人間が理性的であるというのは、彼らが一連の信念や目標を持っているという意味で一貫しており、かつまた、彼らの行為は信念や目標によって正当化可能という意味で大部分一貫しているということを言う。逆に、信念、欲求、目的が人間に帰属させることができるとき、その人間は理性的であるとみなさなければならない。(D.Davidson)

→この意味での合理性は記述的であるが、同時にその合理性からどの程度逸脱しているかによって人々を評価するため、規範的な側面もある。

  • 狭義の合理性:

(1)知識の形成に関わる合理性=何を信じるべきか=理論的合理性

(2)行動選択に関わる合理性=何をすべきか=実践的合理性

→合理性はこの二種類ですべて覆われるか? 2つの側面は区別するに値するか?(4.2)

  • 何を望むべきかといった問いに関わる理性もあるのでは?

→重要ではない。∵不可能なものを望むべきではないから

  • 工学では、(行為や信念、欲求ではない)人工物や設計について、「合理性」という語で特徴付けることがある。その場合、合理的に遂行された過程から生じた人工物を合理的とみなすことができる可能性がある。

⇄しかし、特定の行為が合理的であると言われるとき、それはその行為がなされたある特定の状況においてのみそういえる。(例えば、左に曲がることが合理的であるといえるのは、信号機がそう指示している状況においてのみいえる。)

日常生活では状況を超えて行為をするということは滅多にないが、工学ではそれが製造されたり発展した状況を超えた場所に置かれることはいつものことである。

 

4.2 Theoretical and Practical Rationality

  • 工学の実践では、理論的合理性と実践的合理性の両方が重要になる。

:実践的合理性←物理的な環境を変えるという意味で、工学は行為に関わる。

理論的合理性←変えるべき(環境の)実際の状態についての知識や、手段-目的関係に関する知識がない工学を想像することは困難である。=信頼できる知識が必要。

  • 実践的合理性と理論的合理性は区別できるか?

信じるということは、一種の行為とみなすべきではないのか?であれば、すべての合理性はつまるところ、実践的合理性なのではないか?

→その場合、信念の採用を直接導く欲求や目標を導入することになる。

→しかし、我々は複数の目標をもつことが普通であるし、目標が誤った信念を持たせることもある。→この見解には問題がある。

⇄両者は独立しているというわけではない。

:実践的理性の一部は、(1)その人がいる状況についての、(2)その人に開かれている選択肢についての、(3)選択肢がもたらす結果についての知識を形成する。

≒科学と技術の関係

:科学において、研究は知識の形成に直接関係する。(その信念が支持される行為の状況に関わらず)

⇄研究は、技術においても重要な役割を演じるが、その場合設計における決定をする上で必要な知識に関わる。

  • 逆に、理論的理性の中に実践的理性があると考えることもできないか?

→???

4.3 Theories of Rational Reasoning VS Rational Behavior

  • 理論的/実践的理性という区別の他にも、2種類の合理性の理論が唱えられてきた。
    • 合理的推論の理論:メンタルプロセスに関する理論

⑵ 合理的振る舞いの理論:人間の行為についての理論。選択肢の中で、どの行為が目的を実現したり欲求を満たし行為であるか?そしてその意味において合理的であるかどうかに関する理論。

両者を分けることが重要

∵行為は合理未満であったとしても、たまたま効用を最大化したり、目標に到達することがあるから。

  →合理的推論の観点からは「非合理」であり、合理的振る舞いの観点からは「合理的」である。

逆の場合もある。

Ex 工学設計において、あるエンジニアは利用できる選択肢についての何らかの知識に基づいて設計の問題に対して特定の解決策を選んだとする。

→彼女の知っていた選択肢の中では合理的であった。

→しかし、彼女は誤った信念に基づいて効用を最大化する選択肢を選んだため、それが合理的な解決ではないかもしれない。

→合理的推論の観点からは合理的であるが、合理的振る舞いの観点からは非合理である。

合理的推論の理論=内的な観点を採用する方法

合理的振る舞いの理論=外的な観点を採用する方法

4.4 Fixation of Means VS Fixation of Ends

  • 合理性の規範は、手段のfixationにのみ適用されるのか、目的のfixationにも適用されるのか?

→最も有力な考えは、目的や欲求を実現する効率や効果に理性の範囲が限定されるというもの=instrumental rationality (役に立つ道具としての合理性)

:ある人の合理性は、ある人の欲求や目的の実現に役立つ道具として奉仕するものとみなされる。

→手段にのみ関係する。

⇄目的に関しても、何らかの合理的な批判の可能性を認めている。(ex 月面に最初に着陸する、永久機関を作る、、といった目的は非合理であるとみなす)

→ある人の信念に基づいて不可能だとされる目的を持つことは非合理であると考える。

  • Epistemic rationalityとorectic rationality

4.5 Procedural and substantive Rationality

  • 合理性の問題と目的/手段のfixationは、「手続き上の合理性procedural rationality」と「本質的な合理性(substantive rationality)」との間の区別に深く関わっている。

手続き主義者:目的の固定化は、実践的な理性の範疇を超える根本的な目的と、合理的な批判に身をさらす道具的な目的の両方に属していると考える。

本質主義者:すべての目的は理性による精査にかけられている。

 

  • The Instrumental Conception of Rationality
  • 道具的合理性=所与の選択肢の中で、効用を最大化する案を確かなものにする(establishing)手続きにおける選択の合理性
  • Rationality in Engineering-Design Practice

6.1 Creating and Rationality in Engineering Design

  • 創造的活動としての工学設計と、合理的活動としての工学設計は、どのように関係しているか。両者は矛盾しないか。
  • 突然のアイデアのひらめきの中に位置付ける通俗的な「創造性」のイメージは、実際の実践を正当に取り扱っていない。

→単なるアイデアではなく、実行可能なアイデアが重要。

→アイデアをハードウェアに変換するためには、そこに至るまでの創造的・建設的な思考の試行錯誤が必要。

  • 同時に、様々な提案が議論の俎上にあげられれば、部分的には合理性に基づいて意思決定される。=工学設計には、創造性と合理性の両方が必要。
  • ポパーの見解

:合理的な方法という意味で、科学の発見において「論理」は存在しない。

  科学における合理性は、新しいアイデアを反駁することの中に属する。

  →科学的なアイデアが生み出される方法は合理的な分析には従わず、それらの正当化のみが合理的な分析に従う。

  →創造性と合理性は分離している。

  :両者に緊張関係があっても、科学を創造的でありかつ合理性であると考えることは問題ない。∵両者は異なった文脈で各々の役割を演じるから。

→創造性:発見の文脈/合理性:正当化の文脈

→設計において、発明に関わるのが創造性で、アイデアの選択に関わるのが合理性。両者はべつの文脈で機能し、それゆえ、設計が合理的でありかつ創造的だということは問題ない。

  • 両者は本当に区別可能なのだろうか?

合理性を、「道具的な合理性」(=所与の選択肢の中で、効用を最大化する案を確かなものにする(establishing)手続きにおける選択の合理性)だけに限定しても良いのか?

→両者は設計において、お互い手を携えているのではないか。

  • The Engineering Picture of the design process
  • 工学設計の合理的なプロセスのダイアグラムを検討する。

 :いくつかのサブタスクに分け、それを順番に並べる。

 ←この段階を実装することで、設計のパフォーマンスが改善されるという精神が背後にある。

  • 設計の仕事を扱うための言語と語彙を提供する。

⇄設計者は、設計が「固定化」したときに、プロセスはほぼ完成したと考え、レイアウトや文書を作成する。

しかし、四角いダイアグラムは、反復の可能性が示されているものの、実際の設計に比べてより機械的で直線的な表現になっている。

 →設計の過度に理想化された姿であり、完全ではないにせよ、設計の完成に求められる参加者間の交渉や意見交換といった側面を見落としている。

  • ダイアグラムが示しているのは、「プロセス合理性」

:道具的合理性の一種で、様々なステップの最良の手順や連続を表しており、より「良い」設計を志向している。

⇄設計過程の抽象化された姿に基づいており、その結果、プロセス合理性も抽象的になっている。

→設計過程の構造に影響する合理的な決定と、設計物に影響を与える合理的な決定との間の関係はどういうものか。

→この関係が曖昧なままでは、ダイアグラムの価値は全く明らかではない。

  • Rationality and Design Decisions(決定に合理性はどう関わるのか)
    • Design as a rational decision process of selecting the best choice

(合理的な決定の過程としての設計)

  • 設計の過程=合理的な意思決定の一部→設計者は最善の設計を一つ選ぶ。

→(道具的な)合理性は、所与の選択肢の中からの選択に関わるだけではなく、選択肢を生み出す過程にも関わると考えることもできる。

→最善のものから最悪のものまで、あらゆるすべての設計のコンセプトの序列を作ることが、設計における主要な課題になる。

  • Rational decision making design teams
  • 複数の設計者が共同で設計を選択するとき、合理的意思決定の理論を用いるためには、共同選好尺度が求めらる。

←集団的な選択肢の優先順位を、それが社会的集団的とみなされる単一の優先順位へいかに最適に変換するかが、中心的な問題になる。

→アローの不可能性定理:個人の尺度のみが与えられている場合、集団的選好尺度の概念に意味を持たせることはできない。

→複数の設計者が働いている場合には、合理的な優先順位を構築できない。

→メンバー間で意見が異なる場合、話し合いをする必要がある。

→7節で決定の交渉についての社会的次元について分析する。

  • Multi-criteria Rational Decision Making
  • アローの定理は、所与の一連の設計解決を一つの優先順位に到達する過程が合理的な精査にかけられる場合にも、役割を果たす。

:設計過程は、最初の段階での機能的な条件に起因する多数の基準に従う。そのような機能的な条件は、例えば、「2000Paの圧力に耐えることができる」といった、満たされるか満たされないかの制約を持つ特性に変換される必要はない。

⇄「可能な限り軽量で」、「可能な限り堅牢で」といった様々な設計概念が比較、評価されなければならない基準に変換される。

Ex 重量を高い優先順位に置けば、堅牢さは低い優先順位に置かれる。

設計者は、このような様々な個々の優先順位のセットを、「最良」に表す単一の順序に集約する問題に直面する。

=個々人の優先順位を集団的・社会的優先順位に集約させる問題と同型。

→アローの定理により、この問題の合理的な解決策は存在しない。

 

  • Design as a Social Process

7.1 Social versus Societal Aspect of  Design

  • 工学の設計の問題の解決は、個人に生じる活動ではなく、企業の中の設計チームの中で生じるもの。→工学の設計は社会的文脈の中に埋め込まれている。

→特に合理性の問題について工学設計の社会的要素の役割を分析するのに際して、「社会」という語の使われ方を区別しなければならない。

社会=社会-技術体系(socio-technical system)の中の、その機能に必要不可欠な、設計物以外の、非技術的な、その他すべての要素。Ex 法律、制度など

  • 設計仕様が変更されなければならないとき、道具的な合理性とは異なった合理的な行動の別の形態として、「社会」がどのように理解されるのか。
    • Object World
  • 設計に携わる各々の専門家は、職業的な実践の固有の世界の中にいる。

←専門的な視点からの仕事の方法の標準的なモデルの世界

→固有の時間スケール(秒単位なのか日単位なのか)、固有のインフラ(特別な機器、テクスト、ハードウェア…)を含む。そして、固有の“方言”を話す。

object world (Buccuarelli,1996)

  • Object worldの中で、それぞれの工学者らは人工物の振る舞いの抽象化を行う。

→事物の機能の仕方の原理を明らかにするために、(まるでそのように振る舞うかのように)ある見方で外見を変形する。

Ex 構造の専門家は飛行機を翼の構造に焦点を当てた見方をする。エンジンの専門家は重さ、サイズ、発電機など飛行機全体を見る。航空力学の専門家は飛行機の周りの流れの場(flow field)を見る。(図4)

  • それぞれのobject worldの中では、道具的なモデルや方法が適用可能である。

=問題は、良く定義され(wee-defined)、良く構造化されて(well-structured)いる。

  • ⇄様々なObject worldが交錯すると、そうはいかない。

→“one object, different object worlds”

Object worldの言葉の中で結論に至る、包括的な方法は存在しない。

→工学者らは、彼らの固有の見方についての意味を、他の世界に住む専門家らが確立できるように、結果を強調しなければならない。

  • The limit of Reasoning
  • DreyfusとDreyfusは、calculative rationality(計算の合理性)と、deliberative rationality(熟慮の合理性)の間の区別を設けた。

計算の合理性:道具的合理性と大体同じ

熟慮の合理性:専門の直感的な能力に根ざしているもの

⇄専門家の集団の行動を考える際には、役に立たない。計算の合理性と同様に熟慮の合理性にも依存してるかもしれないが、交渉が要求された際に、ある個人が他の専門家よりも抜きん出ていて、職業的な役割を果たすということはない。

:個人の認知的な振る舞いから、理性の社会的行使の次元へ

ハーバーマスの社会的合理性は大きいが、我々の関心はローカルでミクロなもの。

しかし、彼の合理的なやりとりの像は、会社内での工学者の設計の観察に役立つ

:提案的真理、規範的正当性(主観性)、誠実な表現などの全てが、意思決定の混合の中に入る。(Ex xのパーツはy度以上になると破損するだろうという一環的な主張があり、使用者の手に渡る製品の安全性を確かめるテストに時間を費やせという主張があり、ラッチ機構の設計の単純性の主張がある。)

  • コミュニケーション的理性にとって、信頼が本質的であるのは明らかである。

→信頼は、事前理解(pre-understanding)の次元の一つである。

→コミュニケーション的理性≒熟慮の合理性

∵参加者が設計について合意に至ったのは、単に専門家であるということだけで、彼らが様々な理由を与えたということに気づくから。

→社会的合理性の根拠にはゆるさが存在する。

→参加者は異なった主張や提案が交差することを理解しているが、それらを妥協させる全体を包み込むような合理的方法は存在しないということも理解している。

⇄全員が喜ぶような結果になることもある。

→そのプロセスはいかにして合理的なものとして構築されるのか。どのような方法を行うのか。あるいは行うべきなのか。

  • 一つのアプローチは、参加者が「満足する」設計に落ち着くことを想定すること。

Cf パレート最適

  • 合理的理性が限界に突き当たったことと同様に、合理性の社会的形態も限界に突き当たった。

工学の設計は、より広い状況で生じており、その状況は他の選択肢に比べてある選択肢が好まれるべき理由を与えるかもしれない。

→決定は、設計物に直接関係しない理由や熟考に基づいてなされる。

Ex 企業間の序列、権力、個々人間の信頼性

→厳密には工学設計の関係を超えた視点から、よりよい選択肢が選ばれるかもしれない。

 

 

Philosophy of Technology and Engineering Sciences (Handbook of the Philosophy of Science 9) (English Edition)

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