遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史[新版]』を読みました。

本書は、昭和の歴史を、政治・経済・文化の諸分野の動きを統一的に把握しながら、14年間の戦争に重点を置いて叙述した史書である。 第1章「第一次世界大戦後の日本」では、戦争がなぜ起こり、なぜ国民の力が勝利しなかったのかを捉えるべく、大正期まで遡り…

佐々木隆治『カール・マルクス』を読みました。

卒研等でなかなか読書が進まず、18日ぶりの更新となりました。 さて、これからマルクスの『資本論』を読んでいこうと思っていて、そのための予習として本書を読みました。知人に良いと勧められて読んだのですが、予想以上に読み応えのあるたいへん濃密な内容…

落合陽一・堀江貴文『10年後の仕事図鑑』を読みました。

人工知能によって、いつ、どんな職業が、どのように、(なぜ)代替されるようになるのか、 また、どんな仕事が新たに生まれるのか?みたいなことの興味があって、本書をよんでみた。 インターネットやAIといった科学技術の進展によって社会は急速に変化し、21…

ミシェル・ウェルベック『闘争領域の拡大』を読みました。

『Extension du Domaine de la Lutte』 (1994)の邦訳。ウェルベックの処女作で、長らく手に入りづらい状態が続いていたが、最近文庫化された。平野啓一郎がどこかで推薦していて、ずっと興味があったので、この機会に読んでみた。 主人公の「僕」はソフトウ…

吉岡斉『科学革命の政治学』を読みました。

本書は著者の3冊目の単著で、科学社会学の分野では、前作『科学社会学の構想』に続いて書かれた2冊目の作品である。ここでは、『科学文明の暴走過程』で展開されるジャパニーズ・モデル/アメリカン・モデルといった図式の萌芽も見られ、開放系モデルに基づく…

内田樹・石川康宏『若者よ、マルクスを読もう』を読みました。

内田氏、石川氏との往復書簡形式で、『共産党宣言』、『ユダヤ人問題によせて』、『ヘーゲル法哲学批判序説』『経済学・哲学草稿』、『ドイツ・イデオロギー』のそれぞれの「聞かせどころ」を紹介するといった本。 内田樹曰く、マルクスを読むというのは、何…

吉岡斉『科学文明の暴走過程』を読みました。

本書の主題は、「科学技術体制」(=研究開発活動のマクロの推進メカニズム)の構造に関する一般理論の骨子を示すことにあり、科学技術社会学の分野におけるやがて書かれるであろう『資本論』の基本的筋書きを示すものであると書かれている。(実際、その『資本…

福永武彦『死の島』を読みました。

国内で好きな作家を一人挙げろと言われたら、おそらく堀辰雄か福永武彦かで迷い、結局福永と答えるだろうと思う。彼の工夫された小説の構築手法もそうだが、それ以上に、明快でありながら、音楽のように優しく流れていく文体がたまらなく好きだ。高校のとき…

論文review

1 河村豊「旧日本海軍における戦時技術対策の特徴-第二次大戦期の実用レーダーを事例に」『科学史研究』第40巻通号218(2001年)、75-86頁。 本稿では、旧日本海軍のメートル波レーダーの設計、製造、配備の実態を明かにし、日本のレーダーに対するこれまでの…

西垣通『ビッグデータと人工知能-可能性と罠を見極める』を読みました。

本書は「AI狂騒」から離れて、慎重に AIの可能性と罠を見極めようとする視点が貫いている。深層学習のブレイクスルーを認めながらも、AIが概念を獲得することはあり得ない(p86)、人工知能で外国語学習が不要になる日など決してこない(p121)、人工知能に文学…

松尾豊『人工知能は人間を越えるか』を読みました。

アマゾンのレビュー数などから、本書はおそらくAIの入門書の決定版といって良いのではないでしょうか。少し難しい箇所もありますが、とても面白く、信頼できる内容だと感じました。 本書の主張は、第三次AIブームをブームたらしめてる「ディープラーニング」…

松原仁『AIに心は宿るのか』を読みました。

タイトル通り、「AIが心を宿す」とはどういうことかを、小説や囲碁などにおける創造性という観点から考察した本です。 「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」では、AIにSF小説を執筆させ、星新一賞に応募するという試み。その作品は第三回に応募さ…

水沢光『軍用機の誕生-日本軍の航空戦略と技術開発』を読みました。

きっかけ:戦前・戦時期の日本の軍用機の研究開発について知りたい。 良い点:明快な論理展開でわかりやすい。図表も豊富で、イメージを膨らませながら読むことができる。軍事史的背景も詳しい。 悪い点:あくまでも一般向けの書籍で、注釈等は省略されてい…

山本義隆『近代日本150年-科学技術総力戦体制の破綻』を読みました。

きっかけ:軍事と科学という卒論の研究テーマと密接に関わる。 良い点:日本近代化の150年の歩みを、科学技術総力戦体制の拡大と破綻というストーリーで描いた力作。 悪い点:「体制化」図式の限界など。 評価:A その他メモ:池内了氏による書評あり(有料)…

マイケル・サンデル『完全な人間を目指さなくてもよい理由』を読みました。

Michael J. Sandel『The Case against Perfection: Ethics in the Age of Genetic Engineering 』の邦訳です。 きっかけ:エンハンスメントに対して、自分の立場を明確にしたい。 良い点:とても面白い。緻密な論理、慎重な言葉の選択など、優れた議論を展開…

横山輝雄『生物学の歴史-進化論の形成と展開』を読みました。

きっかけ:生物学史が知りたい。 良い点:コンパクトで読み易い。また科学と宗教(キリスト教)が、単純な対立関係にあるのではなく、両者が絡み合ってきたという点について、理解できる。 悪い点:生物学史のテキストだが、進化論を中心とした歴史で、解剖学…

ウィリアム・バイナム『医学の歴史』を読みました。

本書は、『The History of Medicine: A Very Short Introduction』の邦訳です。 きっかけ:医学史が知りたい。 良い点:構成が工夫されている。具体的には、臨床、書物、病院、共同体、実験室という5つ類型に分けて、それらが歴史的に重層していく様を記し、…

史料としての図像-「画像に潜む知られざる医学史」(於:慶応大学 6/28)

ハーバード大学の医学史研究者の栗山茂久先生の発表を拝聴いたしました。とても刺激的で、興味深く、含蓄のあるプレゼンテーションでした。プレゼンテーションの魅了は、図像を並列(juxtaposition)し互いを比較すること、抽象的な概念をアニメーションを伴っ…

古川安「化学者たちの京都学派-喜多源逸と日本の化学」(科学史学校 於:日本大学)

日本大学で行われた科学史学校での古川先生の講演を拝聴いたしましたので、私が理解した範囲で、第1章の部分を中心に、以下に内容をまとめてみます。 概要 『化学者たちの京都学派-喜多源逸と日本の化学』は、化学史研究の第一人者である著者が、「喜多源逸…

中山茂『天の科学史』を読みました。

天文学の通史を学びたくて、『天の科学史』を読んだ。著者の中山茂は、大学で天文学を、大学院でアメリカに留学して、トマス・クーンに会い、科学史を学んだ。中山茂氏のよく知られた仕事の一つはクーンの『科学革命の構造』の邦訳である。実際、本書ではパ…

Review:水沢光「第二次世界大戦期における文部省の科学論文題目速報事業および翻訳事業ー犬丸秀雄関係文書を基に」

本論文では、第二次世界大戦期における文部省の科学論文題目速報事業と翻訳事業を分析することで、文部省の「科学研究の戦力化」とは異なった、科学動員の実相をより多面的に描くことを目的としている。青木、河村らの先行研究では、1943年の「科学研究の緊…

橋本毅彦『図説科学史入門』

本書は、図像を題材に取り上げた科学史の入門書であり、天文、気象、地質、動物と植物、人体、生命科学、分子・原子・素粒子という7つの自然科学の各分野の歴史を詳細に解説している。以下では、偶数の章を、それぞれ特定の観点から再構成し、関連する内容を…

田中浩朗 科学技術動員体制史から見たデュアル・ユース研究の推奨-「デュアル・ユース化」の視点 (2018.6.5火ゼミ、於:東工大)

火ゼミに参加させていただき、田中先生の発表を拝聴いたしました。私の理解できた範囲内で、内容を以下にまとめたいと思います。 2015年より、防衛省の競争的資金制度である「安全保障技術推進制度」が創設された。将来的には防衛分野の研究開発に資すること…

小林信一「科学技術・イノベーション政策のために第7回-デュアルユース・テクノロジーをめぐって」

【概要】 2015年に発足した防衛省の安全保障技術研究推進制度を契機に2017年日本学術会議で「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表し、軍事目的のための科学研究を行わないといった過去の声明を継承するとともに、軍事的安全保障研究とみなされる可能性の…

リチャードR.ネルソン『月とゲットー:科学技術と公共政策』

本書の問いは、我々は人を月に送ることができる科学技術を持っているにもかかわらず、都市の貧困、犯罪といった問題を解決できないのは何故か、という大胆でかつ深刻な問題である。この本は、この問題に対する解決策を提供するものではなく、これらをめぐる…

[Review]森脇江介「戦時期日本の科学振興政策-科学研究費交付金の創設と運用」

ご本人から頂いた修士論文を拝読致しましたので、以下に概要をまとめさせていただきます。科学振興調査会と帝国議会の議事録をもとに科研費創設の過程と運用を分析した、戦時科学史研究にとっては重要な論文だと思います。なお本論文は、駒場キャンパス16号…

今週読んだ雑誌論文や論考の概要など

(1)青木洋「第二次世界大戦中の科学動員と学術研究会議の研究班」『社会経済史学』第72巻第3号(2006年)、63-85頁。↓ https://www.jstage.jst.go.jp/article/sehs/72/3/72_KJ00005697928/_pdf/-char/ja 本稿では学術会議の研究班を取り上げ、その活動の経緯、…

小島寛之『数学的決断の技術』を読みました。

この本は、私たちが日々遭遇する選択行動の癖を知り、適切な決断の方法を場面によって使い分けるようにできる技術を伝達するいわゆる「ハウツー本」のように見せかけつつ、実は意思決定理論(数学と統計学と経済学と心理学にまたがる学際領域)の標準から最…

古川安『科学の社会史−ルネサンスから20世紀まで』(後半)

1760年代から1860年代にイギリスで起きた産業革命の担い手は伝統的職人層だった。化学を除けば、そこではここの新技術の誕生に大きな役割は果たさなかった。むしろ伝統技術の改良、応用、創意工夫で成果をあげた。しかし逆に、産業革命は科学に以下の影響を…

古川安『科学の社会史−ルネサンスから20世紀まで』(前半)

16ー17世紀の西欧近代の幕開けに成立した近代科学と今日の科学は、その内的側面以上に、社会的側面において、大きな変化を経験した。当時大学では科学の専門教育は行われていなかった。科学は私財を投じるか、裕福なパトロンに財政援助を受けることで初めて…