yokoken001’s diary

書評を中心に記しています。

山田朗『軍備拡張の近代史-日本軍の膨張と崩壊』1997年

戦史ではなく「軍事力の歴史」を扱った史書。少し古いが、軍事史以外の異分野でもしばしば引用される文献の一つ。 本書では戦時体制にない時期に、いかなる思想のもと、どれほどのエネルギーを費やして軍事力が建設されたのかという問題が主に扱われる。その…

沢井実『近代日本の研究開発体制』とその書評を読む。

沢井実『近代日本の研究開発体制』(名古屋大学出版会、2012年) 本書は、研究開発体制(ナショナルイノベーションシステム)の近代日本における特質を約半世紀に及ぶ長期的な視点に経って600頁以上に渡って考察した大作である。著者が描く見取り図は、幕末から…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (6)

Hugh G.J. Aitken, Syntony and Spark: The origin of radio (New York: Wiley, 1976),(Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), pp.298-340. 最終章では、序章で設定されていた問題、すなわち、科学と技術と経済という3つの社会的活動…

論文レビュー:平本論文(真空管産業 3)

平本厚「真空管技術と共同研究開発の生成-戦前から戦中における共同研究開発の開始と広がり」平本厚編『日本におけるイノベーション・システムとしての共同研究開発はいかに生まれたか-組織論連携の歴史分析』(ミネルヴァ書房、2014年)。 『日本におけるイノ…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (5)-2

: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 5.後半(pp.244-297) 5章後半の内容のまとめ。備忘録です。 マルコーニが、火花式(disc-discharger)によって、連続波に近い波の発振を…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (5)-1

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 5.pp.179-244. 以下では、第五章の前半までの内容をまとめています。ここでは、グリエルモ・マル…

平野啓一郎『透明な迷宮』を読みました。

『透明な迷宮』は、2014年に刊行された短編集で、著者自身による創作時期の分類によると、第4期(後期分人主義)に含まれる作品だ。一つ一つの小品は完全に独立しているわけではなく、テーマや要素が緩やかに重なり合う6つの短編が収録されている。 作風として…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (4)-2

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 4. 後半(pp.124-178) ようやく第四章を読み終えました。正直、かなり苦戦しています。特に電子工…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (4)-1

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014), Chapter 4. 前半(pp.80-124) 前章のヘルツに続いて、第四章ではオリバー・ロッジの業績を中心に論じられ…

平野啓一郎『かたちだけの愛』を読みました。

これまで、『ある男』、『マチネの終わりに』、『空白を満たしなさい』と著者の長編小説を時代を遡っていくように読んできた。そして、今回読んだ『かたちだけの愛』という小説は、僕にとって、4作品中一番読み応えがあり、もっとも好きな作品になった。 多…

平野啓一郎『空白を満たしなさい』を読みました。

一度死んだはずの人間が生き返ってくる。 この非現実的な設定を通じて、あるいは一つの思考実験を通じて、人間が生きるということまた死ぬということは何なのか、そして人はなぜ自殺をするのかという問題を考えた長編小説である。 主人公の徹生は、ビールの…

論文レビュー (平本論文、2000年)

平本厚「日本における電子部品産業の形成-受動電子部品」『研究年報経済学(東北大学)』第61号、第4巻(2000年)、21-39頁。 本論は、電子部品の成長や発展がエレクトロニクス産業全体の発展に及ぼした正負の影響という経営史的な問題を背景に置きつつ、抵抗器…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (3)

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014) , chapter 3 . 第三章は、ハインリッヒ・ヘルツの業績を中心に論じた章である。彼は、マックスウェルの理…

平野啓一郎『ある男』を読みました。

とてもいい物語だった。この小説を読んでいたここ一週間、本を開いている間は、この物語世界にどっぷりと浸ることができた。 本書では、臓器移植、在日朝鮮人へのヘイトスピーチ、デモへ参加することの是非、死刑の是非、死刑囚の子どもなど、数多くの社会的…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (2)

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014) “syntony”(同調)という言葉は、現在ではほとんど用いられない言葉であるが、元々は無線通信の用語としてOl…

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio (1)

Hugh G.J.Aitken , Syntony and Spark: The origin of radio, Wiley, New York,1976. (Princeton Univertsity Press,Princeton Ligacy Library,2014) 技術史家Aitkenによる無線通信史の古典を、少しずつ読んでいきます。 第一章 新しい物事はいかにして生じ…

論文レビュー(池上論文 1 )

池上俊三「日本における写真レンズ技術の進歩-軍需主導による発展と工学設計における独創性の萌芽(1925~1945年)」『科学史研究』第49号(2010年)、129-141頁。 明治以降の日本の技術発展における典型的なパターンは、模倣から独自設計・製造へと軍需主導で向…

 大淀昇一「技術官僚と『科学技術』-宮本武之輔のあゆみから考える」

大淀昇一「技術官僚と『科学技術』-宮本武之輔のあゆみから考える」『科学史研究』第54巻(2015年)、141-147頁。 日本の戦時科学技術体制にかんする研究で、とりわけ重要な成果は、大淀昇一氏による技術官僚についての一連の研究であろう。その浩瀚な研究書(…

論文レビュー

平野千博「「科学技術」の語源と語感」『情報管理』第42号、第5巻(1999年)、371-379頁。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/42/5/42_5_371/_pdf/-char/ja こんにち、「科学技術」という言葉は、新聞記事や書籍、法律(ex 科学技術基本法)、省庁…

論文レビュー:平本論文(真空管産業 2)

平本厚「真空管産業における独占体制の形成」『研究年報経済学(東北大学)』第72巻第3-4号(2012年)、1-22頁。 前稿に引き続き本稿も、日本における真空管産業の発展を明らかにしようとする作業の一環をなすものである。ここでは、1920年代末から戦時統制が始…

Jeremy Vetter “Explaining Structural Constrains on Lay Participation in Field Science”

Jeremy Vetter “Explaining Structural Constrains on Lay Participation in Field Science” Isis,Vol110,No2,pp.325-327. ↓DL可 https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/703334 Jeremy Vetterは、20世紀西アメリカのネブラスカの採掘場おける…

Halen Anne Curry “Why Save a Seed?” Isis,vol.110,No.2(2019)

Halen Anne Curry “Why Save a Seed?” Isis,vol.110,No.2(2019),pp337-340. ↓ここからDL可 https://www.journals.uchicago.edu/doi/pdfplus/10.1086/703337 ISISの110巻第2号(2019年)では、「科学史における説明」という特集が組まれた。13人の歴史家は、各…

論文レビュー:平本論文(真空管産業 1)

平本厚「日本における真空管産業の形成」『研究年報経済学(東北大学)』第68巻第2号(2007年)、1-16頁。 真空管の発明は、人為的な電子の流れを利用したエレクトニクスの発展の幕を開いた革新的な出来事であった。本論は、日本においてどのように真空管技術が…

益川敏英『科学者は戦争で何をしたか』を読みました。

ビッグバン理論によれば、宇宙が誕生してから10の0条(=1)秒後、飛び回っていた陽子同士がくっついて原子核ができる「元素合成」が起こったとされる。と同時に、この瞬間温度でいうと10の10条度であり、粒子と反粒子を生み出すための十分なエネルギーが存在し…

池内了『科学者はなぜ軍事研究に手を染めてはいけないか』を読みました。

本書は、軍事研究の反対論を唱えてきた著者が、若い研究者へ向けて「軍事研究に手を染めてはいけない」という倫理的な規範を示した指南の書である。 池内了『科学者と戦争』(岩波新書、2016年)は、益川敏英『科学者は戦争で何をしたか』(集英社新書、2015年)…

論文レビュー

水沢光「日中戦争下における基礎研究シフト」『科学史研究』第51巻(2012年)、210-219頁。 1939年に創設された科学研究費交付金は、戦時下にも関わらず、基礎的研究を重視する研究費制度だった。文部省編『学制百年史』によれば、科学封鎖の危機を打開するた…

論文レビュー

青木洋「学術研究会議の共同研究活動と科学動員の終焉-戦中から戦後へ」『科学技術史』第10号(2007年)、1-40頁。 本稿は、学術研究会議の歴史を扱った一連の青木論文(「学術研究会議と共同研究の歴史-戦前から戦中へ」、「第二次世界大戦中の科学動員と学術…

論文レビュー

青木洋「第二次世界大戦中の科学動員と学術研究会議の研究班」『社会経済史学』第72巻第3号(2006年)、63-85頁。 青木氏の前著「学術研究会議と共同研究の歴史-戦前から戦中へ」では、文部省所管の学術団体である学術研究会議が、戦時下の1938年に科学振興調…

論文レビュー

青木洋「学術研究会議と共同研究の歴史-戦前から戦中へ」『科学技術史』第9号(2006年)、37-65頁。 日本の科学、技術、産業の歴史において共同研究活動が果たした役割は何だったのか、という経営史的な問題意識に基づき、戦中から戦後にかけて(1920年-1941年)…

橋本健二『アンダークラス-新たな下層階級の出現』を読みました。

ポン・ジュノ監督の『パラサイト-半地下の家族』、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』は、前者がアカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞、後者が主演男優賞をそれぞれ受賞した。私も深い感銘を受けた鑑賞者…