NHK取材班編『太平洋戦争 日本の敗因3-電子兵器「カミカゼ」を制す』を読みました。

平成が終わり、令和の時代が始まろうとしている。 平成の日本には、戦争がない平和な時代だった。しかし、令和はどうか。 この先、憲法9条を始めとして、日本の安全保障のスタンスについて国民的な議論が求められることは、かなりの可能性でありうるだろう。…

福永武彦「かにかくに」を読みました。

福永武彦はやっぱり面白い。 定期的に読みたくなる。(それも、ひっそりと…。) 「かにかくに」は、彼のデビュー作である「草の花」の元になったと言われるレアな中編小説だ。(福永武彦研究会による年譜によると、本作品は作家が18歳のころに発表されたという…

橋爪大三郎『戦争の社会学』を読みました。

戦争を防ぐためには、戦争のことを知ることが必要だ。戦後日本には軍がいないこととし、軍について語ることをタブー視してきた。しかし、戦争はどのような仕組みのうえに成り立っているのかを理解することなしに平和を望んでも、その実現は空想に終わってし…

鳥海靖『もう一度読む日本近代史』を読みました。

修論では、日本の近代科学史、とくに戦中・戦後あたりを対象とする予定なので、日本近代史の土台をつくらなければならないと思い、最初に本書を読んだ。 政治史を中心とした、ベーシックな教科書といった印象だった。扱われている時期は、18世紀末の開国から…

丸山俊一『14歳からの資本主義』を読みました。

自分が生きている社会はどんな仕組みのうえに成り立っているのかを俯瞰的に捉えたいという思いを、絶えず抱いている。聞き慣れた言葉や、なにげない生活のやり取りの中にも、無意識のうちに固定化された物の見方や価値観が、潜んでいるかもしれない。一度立…

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか-問題史的考察』を読みました。

19世紀後半、幕末維新期の日本がヨーロッパをモデルとした近代化を開始したとき、当のヨーロッパでは、自らが経験し、経験しつつある「近代」とは何なのかという、(ある種のメタ認知的な視点たった)理論的省察が始まっていたという。政治学ではウォルター・…

鈴木淳『科学技術政策』を読みました。

本書は、明治初期に「科学」、「技術」という言葉ができてから、科学技術政策が発足するまでの過程を描いたテキストだ。科学技術政策に関する重要な出来事を網羅的に記述し、それらの歴史的意義が簡潔に述べられる。また、本書では陸海軍の政策を他の省をほ…

論文レビュー

田中浩朗「「科学技術動員」の概念について」『福岡教育大学紀要』(1999年)第48号、第二分冊、71-84頁。 本稿は、戦時科学史研究において、最も重要な概念の一つである「科学技術動員」の概念の分析と、その規定の試みである。 第一節では、科学技術動員の使…

ウェストフォール『近代科学の形成』を読みました。

「科学革命(The scientific revolution)」は、コペルニクスの『天球回転論』が書かれた1543年から、ニュートンの『プリンキピア』の1657年にわたるおよそ150年間を指す場合が多い。本書では、そのうち後半の17世紀以降を対象にしている。17世紀の科学革命は…

立岩陽一郎・楊井人文『ファクトチェックとは何か』を読みました。

本書は、日本で初めてファクトチェックについて、詳しく解説したもの。 ファクトチェックとは、いわゆる「事実確認」とは異なる。Fact-checkingを、敢えて日本語に訳すならば、「真偽検証」などと訳すべき営みである。事実確認は、ファクトチェックが注目さ…

一ノ瀬俊也『昭和戦争史講義』を読みました。

本書は、著者によって、埼玉大学教養学部で2017年度後期に行われた「近現代日本の政治と社会Ⅰ」の15回分の講義を書籍化したもの。ジブリ作品を素材にしながら、昭和期の戦争(1931年満州事変、37年日中戦争、41年太平洋戦争など)の歴史を、軍事はさることなが…

金森修『ゴーレムの生命論』を読みました。

『ゴーレムの生命論」は、専門書ではない。しかし、(或いはそれ故に、)本当に面白い本だ。 本当に面白い本を読むと、読書は、著者という<馬の背>に乗って、色々な土地に案内され、見たこともない風景を見せてくれるものだという感じを抱く。ときには、荒々し…

村田沙耶香『コンビニ人間』を読みました。

コンビニ化する◯◯、コンビニ的な◯◯という言い方を、時々耳にします。日本に5,6万件もあるといわれるコンビニは、どの店舗もよく似ていて、そこには機械で作られた清潔な製品で溢れ、それも食品から日用品まで多種多様な製品を扱い、その名の通り生活上「便利…

中川靖造『海軍技術研究所-エレクトロニクス王国の先駆者たち』を読みました。

旧海軍の技術開発に携わった海軍技術官は、戦後の技術復興に大きな役割を果たしたと言われている。中でも目立つのが、当時最先端技術であった電波、通信、磁気、音響といった電子関連兵器の開発に従事した技術官らである。日本のエレクトロニクス開発の源流…

遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史[新版]』を読みました。

本書は、昭和の歴史を、政治・経済・文化の諸分野の動きを統一的に把握しながら、14年間の戦争に重点を置いて叙述した史書である。 第1章「第一次世界大戦後の日本」では、戦争がなぜ起こり、なぜ国民の力が勝利しなかったのかを捉えるべく、大正期まで遡り…

佐々木隆治『カール・マルクス』を読みました。

卒研等でなかなか読書が進まず、18日ぶりの更新となりました。 さて、これからマルクスの『資本論』を読んでいこうと思っていて、そのための予習として本書を読みました。知人に良いと勧められて読んだのですが、予想以上に読み応えのあるたいへん濃密な内容…

落合陽一・堀江貴文『10年後の仕事図鑑』を読みました。

人工知能によって、いつ、どんな職業が、どのように、(なぜ)代替されるようになるのか、 また、どんな仕事が新たに生まれるのか?みたいなことの興味があって、本書をよんでみた。 インターネットやAIといった科学技術の進展によって社会は急速に変化し、21…

ミシェル・ウェルベック『闘争領域の拡大』を読みました。

『Extension du Domaine de la Lutte』 (1994)の邦訳。ウェルベックの処女作で、長らく手に入りづらい状態が続いていたが、最近文庫化された。平野啓一郎がどこかで推薦していて、ずっと興味があったので、この機会に読んでみた。 主人公の「僕」はソフトウ…

吉岡斉『科学革命の政治学』を読みました。

本書は著者の3冊目の単著で、科学社会学の分野では、前作『科学社会学の構想』に続いて書かれた2冊目の作品である。ここでは、『科学文明の暴走過程』で展開されるジャパニーズ・モデル/アメリカン・モデルといった図式の萌芽も見られ、開放系モデルに基づく…

内田樹・石川康宏『若者よ、マルクスを読もう』を読みました。

内田氏、石川氏との往復書簡形式で、『共産党宣言』、『ユダヤ人問題によせて』、『ヘーゲル法哲学批判序説』『経済学・哲学草稿』、『ドイツ・イデオロギー』のそれぞれの「聞かせどころ」を紹介するといった本。 内田樹曰く、マルクスを読むというのは、何…

吉岡斉『科学文明の暴走過程』を読みました。

本書の主題は、「科学技術体制」(=研究開発活動のマクロの推進メカニズム)の構造に関する一般理論の骨子を示すことにあり、科学技術社会学の分野におけるやがて書かれるであろう『資本論』の基本的筋書きを示すものであると書かれている。(実際、その『資本…

福永武彦『死の島』を読みました。

国内で好きな作家を一人挙げろと言われたら、おそらく堀辰雄か福永武彦かで迷い、結局福永と答えるだろうと思う。彼の工夫された小説の構築手法もそうだが、それ以上に、明快でありながら、音楽のように優しく流れていく文体がたまらなく好きだ。高校のとき…

論文review

1 河村豊「旧日本海軍における戦時技術対策の特徴-第二次大戦期の実用レーダーを事例に」『科学史研究』第40巻通号218(2001年)、75-86頁。 本稿では、旧日本海軍のメートル波レーダーの設計、製造、配備の実態を明かにし、日本のレーダーに対するこれまでの…

西垣通『ビッグデータと人工知能-可能性と罠を見極める』を読みました。

本書は「AI狂騒」から離れて、慎重に AIの可能性と罠を見極めようとする視点が貫いている。深層学習のブレイクスルーを認めながらも、AIが概念を獲得することはあり得ない(p86)、人工知能で外国語学習が不要になる日など決してこない(p121)、人工知能に文学…

松尾豊『人工知能は人間を越えるか』を読みました。

アマゾンのレビュー数などから、本書はおそらくAIの入門書の決定版といって良いのではないでしょうか。少し難しい箇所もありますが、とても面白く、信頼できる内容だと感じました。 本書の主張は、第三次AIブームをブームたらしめてる「ディープラーニング」…

松原仁『AIに心は宿るのか』を読みました。

タイトル通り、「AIが心を宿す」とはどういうことかを、小説や囲碁などにおける創造性という観点から考察した本です。 「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」では、AIにSF小説を執筆させ、星新一賞に応募するという試み。その作品は第三回に応募さ…

水沢光『軍用機の誕生-日本軍の航空戦略と技術開発』を読みました。

きっかけ:戦前・戦時期の日本の軍用機の研究開発について知りたい。 良い点:明快な論理展開でわかりやすい。図表も豊富で、イメージを膨らませながら読むことができる。軍事史的背景も詳しい。 悪い点:あくまでも一般向けの書籍で、注釈等は省略されてい…

山本義隆『近代日本150年-科学技術総力戦体制の破綻』を読みました。

きっかけ:軍事と科学という卒論の研究テーマと密接に関わる。 良い点:日本近代化の150年の歩みを、科学技術総力戦体制の拡大と破綻というストーリーで描いた力作。 悪い点:「体制化」図式の限界など。 評価:A その他メモ:池内了氏による書評あり(有料)…

マイケル・サンデル『完全な人間を目指さなくてもよい理由』を読みました。

Michael J. Sandel『The Case against Perfection: Ethics in the Age of Genetic Engineering 』の邦訳です。 きっかけ:エンハンスメントに対して、自分の立場を明確にしたい。 良い点:とても面白い。緻密な論理、慎重な言葉の選択など、優れた議論を展開…

横山輝雄『生物学の歴史-進化論の形成と展開』を読みました。

きっかけ:生物学史が知りたい。 良い点:コンパクトで読み易い。また科学と宗教(キリスト教)が、単純な対立関係にあるのではなく、両者が絡み合ってきたという点について、理解できる。 悪い点:生物学史のテキストだが、進化論を中心とした歴史で、解剖学…